ポストエディットとは? 翻訳に必要な理由とメリットを解説
コンピュータで自動翻訳する機械翻訳の浸透に伴い、“ポストエディット”と呼ばれる翻訳作業の重要性が増しています。
機械翻訳は、スピーディーかつ低価格で翻訳できる優れた手法ではある一方で、人手翻訳と比べると品質が低いという問題点があります。
その問題を解決へ導くのがポストエディットの役割です。ポストエディットを適切に行うことで、機械翻訳のスピード感を維持したまま、人手翻訳の高い品質を実現できます。
この記事では、ポストエディットの基本概要や翻訳に必要な理由、メリットについて解説します。「機械翻訳をする際にポストエディットが必要か知りたい」「ポストエディットのメリットについて把握したい」と考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
なお、機械翻訳の詳細については、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
目次[非表示]
- 1.ポストエディットとは
- 2.ポストエディットが必要な理由
- 3.ポストエディットのメリット
- 3.1.①翻訳の精度が向上する
- 3.2.②翻訳にかかる時間を削減できる
- 3.3.③コストを抑えられる
- 4.まとめ
ポストエディットとは
ポストエディット(Post Edit)とは、機械翻訳で出力された訳文を人間が編集する作業です。英語表記を略して“PE”と呼ばれることがあります。
▼ポストエディットの具体的な手順
- 機械翻訳を行う
- 翻訳者は原文を読み、内容を理解する
- 機械翻訳で翻訳された訳文を読む
- 原文の意味、情報、ニュアンスが訳文に反映されているかを確認する
- 正しくない部分を修正する
ポストエディットは、主に“FPE(Full Post Edit:フルポストエディット)”と“LPE(Light Post Edit:ライトポストエディット)”の2種類に分けられます。
FPEとLPEの作業には、明確な線引きがあるわけではありませんが、次のような違いがあります。
▼FPEとLPEの違い
FPE |
LPE |
原文の背景を加味しながら、全体的に入念な編集を行う |
原文の一部に最低限の手直しを行う |
なお、ポストエディットには、国際標準規格の“ISO18587”が存在します。
ISO18587では、ポストエディターの資格やトレーニング観点などについての情報が記載されています。外部へ委託する際はぜひ参考にしてください。
ポストエディットが必要な理由
ポストエディットが求められる背景には、“正確さが完璧ではない”という機械翻訳の特徴があります。
機械翻訳のクオリティは、ニューラルネットワーク(※)の登場により飛躍的に向上しました。ニューラルネットワークを用いたニューラル機械翻訳では、流暢な訳文が生成されますが、“固有名詞が入れ替わっている”“意味が正反対になっている”など、人手翻訳では発生しないミスが起きるケースもあります。
▼機械翻訳でできること・できないこと
できること |
できないこと |
|
|
機械翻訳では、文章の真意までは読み取ることはできません。そのため、シンプルな表現に翻訳されてしまう点も留意する必要があります。
たとえば、日本語は主語を省くケースが多くありますが、機械翻訳では、前後の文章を読みながら主語を補完するといった翻訳はできません。
また、漢字とひらがなのバランス調整、行間、参考資料などの確認も機械翻訳では行うことができません。機械翻訳では表現しきれない部分を補完するという点においても、ポストエディットが必要であるといえます。
機械翻訳の基本概要とメリット・デメリットは、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
※ニューラルネットワークとは、人間の脳神経系(ニューロン)の一部を模した数理モデルのこと。
ポストエディットのメリット
ポストエディットは、翻訳においてさまざまなメリットをもたらします。ここからは、ポストエディットを行うメリットを3つ紹介します。
①翻訳の精度が向上する
1つ目は、翻訳の精度が向上することです。
機械翻訳は、スピーディーかつ低コストで翻訳できることが強みです。一方で、人手翻訳に比べて正確さに欠ける点や、ニュアンスの違い、誤訳や訳漏れが発生することがあるため、完璧な仕上がりになるとはいえません。
ポストエディットにより、翻訳者が原文と照らし合わせて修正を行うことで、正確さを担保した状態で、人間味のある文章に訳すことができます。
②翻訳にかかる時間を削減できる
2つ目は、翻訳にかかる時間を削減できることです。
人手翻訳とポストエディットでは、いずれも翻訳者が原案を読み込み、内容を深く理解する必要がある点では同じです。
しかし、ポストエディットの場合、翻訳者は機械翻訳した文章を修正します。そのため、訳文の考案や、それらを文字に起こしたりする作業は必要がありません。
機械翻訳によって翻訳スピードを上げることで、ポストエディットを行う翻訳者の作業時間を大幅に削減することが可能です。
③コストを抑えられる
3つ目は、翻訳にかかるコストを抑えられることです。
一般的に、翻訳会社に翻訳を依頼した場合、翻訳に加えて校正作業が発生します。
一方、ポストエディットは、機械翻訳を行ったあとに、翻訳者が編集作業を行います。これにより、翻訳時間を短縮できるほか、校正作業が発生しません。そのため、人手翻訳で依頼する場合と比べてコストを抑えることが可能です。
まとめ
この記事では、ポストエディットについて以下の内容を解説しました。
- ポストエディットとは
- ポストエディットが必要な理由
- ポストエディットのメリット
機械翻訳の精度が向上し続けるなか、誰でも気軽に翻訳ができるようになりました。一方で機械翻訳の訳文には、誤訳や訳漏れ、ニュアンスの違いが生まれやすいといったデメリットがあります。
機械翻訳とポストエディットを適切に組み合わせることで、短期間で精度の高い翻訳を実現することが可能です。
『インターグループ』では、機械翻訳の訳出をプロの翻訳者が編集するポストエディットサービスを提供しています。ポストエディットスキルの教育を修了した翻訳者による正確な作業を最短で仕上げます。
ポストエディットサービスの導入を検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。