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バックトランスレーションの基本と活用法

皆さまは「バックトランスレーション」「逆翻訳」といった言葉をご存じでしょうか。今回は翻訳の品質確認手法としての「バックトランスレーション」について解説します。バックトランスレーションの概念、メリットとデメリット、そして実際の活用例について述べることで、翻訳の品質向上や業務への適用のヒントをご提供します。


目次[非表示]

  1. 1.バックトランスレーションとは
  2. 2.バックトランスレーションの種類
  3. 3.バックトランスレーションのメリット
    1. 3.1.翻訳の精度向上
    2. 3.2.言語理解の手助け
    3. 3.3.翻訳の自己評価
  4. 4.バックトランスレーションのデメリット
    1. 4.1.完全な正確性の欠如
    2. 4.2.機械翻訳の限界
    3. 4.3.時間と労力が必要
  5. 5.バックトランスレーションの向き・不向き
  6. 6.まとめ



バックトランスレーションとは

バックトランスレーション(逆翻訳)とは、翻訳した文章を元の言語に再度翻訳する手段のことを指します。つまり、原文(A)を別言語(B)に翻訳した後、そのBを再度Aに戻す手法です。



日英翻訳の場合
 原文:私は毎朝8時に家を出発して仕事に向かいます。
 訳文:I leave my house every morning at 8:00 to go to work.
 バックトランスレーション(逆翻訳):私は毎朝8時に家を出て仕事に行く。




バックトランスレーションにより、翻訳された文章が原文の意味を正確に伝えているかどうかを確認することができます。上記例の場合、原文とバックトランスレーションの結果に大きな差異はなく、原文が伝えたい情報は過不足なく訳文に反映されていることが分かります。
バックトランスレーションは主に言語学習者や翻訳者・翻訳指導者がよく利用します。正確性のチェックはもちろんのこと、バックトランスレーションは訳文が原文とどれほど意味が一致しているか、どの部分が異なるのかを把握することに役立ちます。



バックトランスレーションの種類

バックトランスレーションには大きく2つのタイプがあり、用途や納期等に応じて選択することが可能です。
 
シングルバックトランスレーション
例 日本語から英語への翻訳の場合
STEP1:日本語の原稿(①)から英語に翻訳した原稿(②)を準備する
STEP2:翻訳者Aは①を参照せずに②を日本語に翻訳する→完成したものを③とする
STEP3:STEP2とは異なるチェック作業者が①と③を比較する
 
ダブルバックトランスレーション
例 日本語から英語への翻訳の場合
STEP1:日本語の原稿(①)を準備する
STEP2:翻訳者Aが①を英語に翻訳する→完成したものを②とする
STEP3:翻訳者Bは①を参照せず、②を日本語に翻訳する→完成したものを③とする
STEP4:STEP3とは異なるチェック作業者が①と③を比較する



バックトランスレーションのメリット

翻訳の精度向上

バックトランスレーションを行うことで、適切な翻訳が行われているか、つまり翻訳された後に意味が失われていないかを確認することができます。もしバックトランスレーションの結果が原文と異なる意味を示す場合、翻訳に誤りがある可能性が高いことが分かります。また、情報の欠落がないか、表現は自然であるかなどを評価することもできます。これにより、原文のニュアンスやディテールを訳文でも適切に再現できているかを検証することができます。


言語理解の手助け

バックトランスレーションは、訳文言語の文法や表現方法を理解することに役立ちます。翻訳者は翻訳言語のニュアンスや慣用句をより深く理解し、より適切な翻訳を行うことができます。
バックトランスレーションには訳文言語を理解できない人でも翻訳品質をチェックすることができるというメリットがあります。例えば日本語からフランス語に翻訳された文章がある場合、フランス語を理解できない場合でもバックトランスレーション(フランス語から日本語)を行うことにより翻訳の質を確認することができます。


例 社内資料を日本語からフランス語に翻訳する場合

社員A(フランス語の読み書きができない日本人)が機械翻訳を使ってフランス語に翻訳する
→フランス語が読めないため、正しく翻訳されているのかどうか判断ができない…
→バックトランスレーションを行ってフランス語から日本語に再度翻訳することで、原文の情報が過不足なく反映されているかを確認できる


翻訳の自己評価

バックトランスレーションは、翻訳者にとって自己評価やフィードバック収集の手段として役立ちます。自身の翻訳結果をバックトランスレーションすることで、翻訳の改善の余地や誤りに気付くことができます。




バックトランスレーションのデメリット

完全な正確性の欠如

バックトランスレーションの結果が原文と完全に一致しないことが多いという点はデメリットの1つです。言語ごとに文化や表現方法・概念が異なるため、完全な一致を求めることは難しいのが現実です。特に言語や文化の違いによって、バックトランスレーションが原文の文脈を正確に反映しないことがあります。そのため、翻訳の品質チェックをバックトランスレーションだけに頼ることは危険です。


機械翻訳の限界

バックトランスレーションを機械翻訳で行う場合、その機械翻訳の精度の限界がバックトランスレーションの結果に影響を与えます。機械翻訳の用語選択や文法適用に問題がある場合、バックトランスレーションの結果にも同様の問題が発生する可能性が高いとされています。


時間と労力が必要

バックトランスレーションはもう一度翻訳することと同義ですので、完成までに時間と労力を要します。特に大量の文章を翻訳した場合、バックトランスレーションを行うためには「原文から訳文への翻訳」と同等の時間と労力が必要になります。

バックトランスレーションはあくまで品質チェックの一助であり、結果が原文と完全に一致しないことは問題ではありません。これはバックトランスレーションの適切な使い方を理解する上で非常に重要なポイントです。バックトランスレーションを行う際には、原文の意味を正確に理解し、その文脈を考慮しながら、適切なバックトランスレーションを行うことが重要です。



バックトランスレーションの向き・不向き

バックトランスレーションは専門性が高い文章、医療や製薬業界などで広く利用されています。新薬の承認申請や臨床試験の情報提供などでは、用語の正確性や一貫性が絶対的に求められます。また、専門用語のような決まった単語や言い回しを使用することが欠かせない文章の場合、バックトランスレーションによって、重要な内容が正確に翻訳され、必要な情報が損なわれず伝わっているかを確認することができます。また、国際的なビジネスを展開する企業でも、契約書やマニュアルの翻訳・企業間の重要なコミュニケーションなどでバックトランスレーションが活用されます。翻訳による企業間の誤解を防ぐことで、ビジネスを成功へ導く手助けとなります。


バックトランスレーションが効果を発揮することができるのは「正確性」の確認においてのみで、言葉の表現力などの「感覚的」な部分についてはチェックすることができないため、商品のキャッチコピーや広告文など創造性が求められる翻訳に対してバックトランスレーションを行うことは向いていません。そういった文章に対して言い回しや読みやすさを確認したい場合には、バックトランスレーションではなくネイティブチェックを行うことがベストです。


ネイティブチェックについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

  プロから見たネイティブチェックの不可欠性 この記事では、翻訳を通じたビジネスコミュニケーションに欠かせない「ネイティブチェック」の重要性とその方法について解説します。翻訳だけでは不十分な点、ネイティブチェックが求められる理由、そしてネイティブチェックを適切に行うためのポイントについて実際の誤訳例も交え、詳しく説明します。 株式会社インターグループ




まとめ

この記事では、バックトランスレーションについて以下の内容を解説しました。


  • バックトランスレーションとは

  • バックトランスレーションの種類

  • バックトランスレーションのメリット

  • バックトランスレーションのデメリット

  • バックトランスレーションの向き・不向き


バックトランスレーションは、翻訳作業の品質をチェックし確認するための信頼性の高い手法です。そのメリットとデメリットを理解し、適切な使い方を身につけることで、効果的に活用することができます。品質の高い翻訳を追求するための重要な手法として、バックトランスレーションをぜひ活用してみてください。

インターグループが提供している機械翻訳サービスPatTra(ぱっとら)では手軽にバックトランスレーションを行っていただくことが可能です。WordやPDFなどのファイルを丸ごと読み込ませて翻訳したあと、1文単位でバックトランスレーションをかけることができます。




PatTraの訳文修正画面では、一文単位で異なる機械翻訳の結果を比べることができ、更にそれぞれバックトランスレーションをかけることも可能です。PatTraは月額使い放題の機械翻訳サービスですので、文字数制限を気に掛けることなくバックトランスレーションをご利用いただけます。

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