プルーフリードのテクニック集:ビジネスや日常での活用法
プルーフリードは翻訳文が「完成品としてふさわしいクオリティかどうか」を判断する最終工程のため、翻訳作業において最も重要な作業といわれています。ご自身で書かれた英文や機械翻訳の訳文をプルーフリードしたいと思っても、どういった点に気を付けて修正を加えていけばいいのかお悩みの方もいらっしゃるかと思います。
この記事では、プルーフリードのポイントと共にプルーフリードを行うことで訳文がどのように変わっていくのかを例文を用いて紹介します。
なお、プルーフリードが行われるケースや翻訳作業に必要な理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
目次[非表示]
プルーフリードのポイント
スペルや文法が正しいことと、シチュエーションに適した自然な表現は必ずしもイコールではありません。意味は通じる英文でも、母語話者が感じる違和感はどうしても発生してしまいます。
例えば冠詞・単数複数など、プロの翻訳者であっても迷うポイント、ネイティブの感覚でしか分からないポイントもあります。さらに、日本人が英文を作成する場合、日本語と英語の両方を理解できるがゆえに、直訳調になってしまいがちです。
では、その具体例を見てみましょう。
例文 俺は海賊王になる!
プルーフリード前の訳文 I'm going to be a Pirate King!
プルーフリード後の訳文 I’ll be the Pirate King!
ポイント1
「a」を定冠詞「the」に修正しています。これは「たった一人の海賊王」のニュアンスを押し出す意味の修正です。
ポイント2
「going to」を「will」に修正しています。「going to」も誤訳ではありませんが、「will」の方がより強い意思を表すことができます。
例文 チャールズ皇太子の息子はカナダに引っ越した
プルーフリード前の訳文 Prince Charles‘ son moved to Canada.
プルーフリード後の訳文 One of Prince Charles’ sons moved to Canada.
ポイント
「Prince Charles‘ son」を「One of Prince Charles’ sons」に修正しています。修正前は「息子は一人しかいない」と読めるニュアンスを「複数の息子がいるうちの一人」と明確に表現するための修正です。
ネイティブによる修正のレベル
翻訳後のドキュメントをどのように使用するのかによって、翻訳の仕上がりイメージは様々です。現場で使うマニュアルの翻訳であれば「ネイティブが読んで不自然さがなく、シンプルに意味が通じるもの」という仕上がりイメージを持たれる場合が多いですし、商品のキャッチコピーの翻訳であれば「スタイリッシュな訳文になるようにブラッシュアップしたい」というご要望もあります。
翻訳会社によって細かい定義は異なりますが、インターグループの修正レベル分けを例に挙げて実際の修正内容をご紹介します。
レベル |
修正内容 |
どんな文書に向いているか |
ネイティブチェック |
スペルや文法の修正 |
マニュアル |
プルーフリード |
+読みやすさの修正 |
ニュースリリース・IR資料・論文 |
リライト |
+ロジック面を含めた文章全体の修正 |
キャッチコピー・スローガン |
ネイティブによる修正例 ①広告文
原文「日本の風景をお持ち帰りください」
電車や旅行会社のキャッチコピーで見かけそうな文章です。実際に「風景を持ち帰る」のではなく、「思い出として心に残してほしい」という気持ちを英訳文でどのように表現できるのか、という点がポイントです。
まずは機械翻訳の結果を見てみましょう。
DeepL Bring back the Japanese landscape.
意味は理解できますが、キャッチコピーとしては弱く、ありきたりな表現ではないでしょうか。
次にネイティブチェック=スペルや文法の修正を加えた結果を見てみます。
Take home Japan’s landscape.
「日本の」の表現が文法的に正しくなるように修正されています。
これをさらにプルーフリード=読みやすさの修正を加えた結果を見てみます。
Bring Japan’s landscape back home.
「Take」が「Bring」に変わったことで「素敵なお土産を持って帰る」というイメージを彷彿させる表現になりました。
最後にリライト=ロジック面を含めた文章全体の修正を加えた結果を見てみます。
Bring Japan’s landscape back home with you.
「with you」が付け加えられました。最初の英文と見比べてみるとかなり離れていますが、メッセージ性は残したままブラッシュアップされた表現になったことがお分かりかと思います。
ネイティブによる修正例 ②宣伝文
原文「スイーツ好きの方は必見です!」
もっと知りたいと思ってもらえるようなパッと目を引く宣伝文にするための修正を加えていきます。
まずは機械翻訳の結果を見てみましょう。
DeepL Sweets lovers will not want to miss this!
宣伝文としては少し長く、インパクトに欠ける印象です。これがどのように修正されるのか見ていきます。
まずネイティブチェックをした結果を見てみます。
Those who have a sweet tooth cannot miss this treat!
「スイーツ好き」の表現が「who have a sweet tooth」とキャッチーな表現に修正されています。
これをさらにプルーフリードをした結果を見てみます。
This treat is a must for those with a sweet tooth!
「must」という強いWordを使うことで、より力強いメッセージになりました。
最後にリライトを加えた結果を見てみます。
Sweets lovers, this is a must!
先ほどまでの「a sweet tooth」の表現はなくなってしまったのですが、「スイーツ好き」に呼びかけるような表現になりました。こちらも最初の英文からはかなり変わりましたが、コンパクトになったことでよりキャッチーな英語に生まれ変わっています。
ネイティブによる修正例 ③レター
原文「皆様のご健康と街の繁栄をお祈りいたします。」
友好姉妹都市間で交わされるレターなどで出てくる表現です。メールのような砕けた文章ではなく、レターやスピーチのように丁寧で適切な表現にブラッシュアップしていく過程をご覧ください。
まずは機械翻訳の結果を見てみましょう。
DeepL We wish you good health and prosperity for the city.
少し直訳すぎる印象ですが、意味は問題なく伝わります。
まずネイティブチェックをした結果を見てみます。
We wish you good health and prosperity for your city.
定型文的な表現のため、文法的には問題がなくネイティブチェックの段階では修正が不要でした。
これをさらにプルーフリードをした結果を見てみます。
Best wishes for your good health and your city’s prosperity.
読みやすさ・流暢性という観点で修正を加えました。冒頭部分で「for」が使われたため、後半の「町の反映」を「prosperity for your city」から「your city’s prosperity」に書き換えています。
最後にリライトを加えた結果を見てみます。
Last but not least, I would like to send my best wishes for your good health and your city’s prosperity.
「Last but not least」を付け加えることで、「最後だけれど大事なこと」というニュアンスが込められて、より力強いメッセージになりました。
ネイティブによる修正例 まとめ
「広告文」「宣伝文」「レター」の3分野を例に挙げてご紹介しました。読み手を惹きつけるキャッチーなフレーズや丁寧に仕上げる必要がある文章は、ネイティブチェックを入れることで、メッセージに込められた熱意をより効果的に伝えられるようになります。
語彙力や表現力が不足していると同じ意味合いでもストレートになりすぎて失礼になってしまうこともありますし、逆に遠回しすぎて伝わらないことがあります。そのような「さじ加減」もネイティブにお任せすることで解消することができます。
まとめ
この記事では、プルーフリードの方法 について以下の内容を解説しました。
プルーフリードのポイント
ネイティブによる修正のレベル
ネイティブによる修正例1~3、まとめ
翻訳の仕上がりイメージに応じて修正を加えることで、より洗練された訳文に変えることができることをご理解いただけたかと思います。
『インターグループ』では、お客様のご要望に応じてネイティブチェック・プルーフリード・リライトをご提案しています。各工程においてチェッカーやプルーフリーダーなどのエキスパートが作業を担当し、洗練された訳文を完成させます。